放射線障害予防細則
趣 旨
この細則は,金沢大学疾患モデル総合研究センターアイソトープ理工系研究施設放射線障害予防規程に基づき放射線障害の予防に関し,その実施を図るために必要な事項を定める。 |
第1章 利用手続
1. 利用者の資格 |
第2章 放射性同位元素の入手と持ち出し
1. 購入,持込み(譲受) |
第3章 管理区域への立入,退出
1. 管理区域への立入 |
第4章 放射性同位元素等の使用
1. 放射性同位元素等使用の基本的事項 (1) 放射性同位元素の取扱いは,指定された実験室等で行うこと。 (2) 基本的実験手技に習熟し,かつ放射性同位元素に関する一般知識を習得していること。 (3) 事前に周到な計画をたて,使用目的に応じて放射線障害発生のおそれの最も少ない方法を採用すること。 (4) 作業は原則として2名以上で行うこと。経験の少ない者は単独で作業を行ってはならない。 (5) 人体に受ける線量を可能な限り低いレベルに保つよう,第2項及び第3項の定めを遵守すること。 2. 密封されていない放射性同位元素の使用 (1) 外部被ばくに対する対策 イ) しゃへい:必要に応じ適当なしゃへい体(鉛ブロック,アクリルしゃへい板等)を線源のできるだけ近くに置き,不必要な放射線ができるだけ作業空間に出ないようしゃへいすること。また,必要に応じ眼鏡をかけるようにすること。 ロ) 距離の確保:必要に応じ距離をとるための器具(ピンセット,トング等)を用い,放射線源よりできるだけ遠くで作業をすること。 ハ) 被ばく時間の短縮:被ばく時間ができるだけ短くなるように作業計画(作業方法,作業手順等)を立て,さらに実際に放射線下の作業を実施する前に,実際と同様な操作を非放射性物質を使用して練習( cold run )しておくこと。 (2) 内部被ばく(外部被ばくも一部含む)に対する対策 イ) 管理区域内を常に整理整頓し,ほこりが立たないよう清潔に保つこと。 ロ) 実験内容から想定して有効と思われるサーベイメーター等を近くに置き,実験を始める前,又は実験中は,随時実験台等の実験環境のチェック及び手足,作業衣等の表面汚染のチェックを行い,汚染がないことを確かめること。 ハ) 作業場所を汚染した場合は,汚染箇所を明示し,汚染の拡大を防いだ後,安全管理担当者に通報してその指示を受けること。 ニ) 身体の表面が汚染した場合は,洗浄剤等を用いて除去すること。除去が困難な場合は,安全管理担当者に通報してその指示を受けること。 ホ) 作業器具,器材を汚染した場合は,洗浄,払拭,保管又は廃棄等の処置を施して除去すること。除去することが困難な場合は,安全管理担当者に通報してその指示を受けること。 ヘ) フード内等には,操作中に生じる放射性廃棄物(不燃物,難燃物,可燃物)用のポリエチレン袋を用意すること。 ト) 揮発性,飛散性,又は気体状の放射性同位元素を使用するとき及び粉末の小分けなどを行うときには,フード内で取り扱うものとし,作業室内の空気汚染をできるだけ少なくすること。また,必要に応じマスク及び眼鏡をかけて取り扱うようにすること。 チ) 手や腕に外傷があるときは,その部分を露出させて放射性同位元素を取扱ってはならない。 リ) 放射性同位元素を含む試料を持ち運ぶ場合は,試料の取り落し,一次容器の破損等が生じた場合でも,周囲を汚染させないよう適当な容器に入れること。 ヌ) 放射性同位元素を使用した実験器具類は,放置しないで直ちに除染洗浄すること。なお,その実験器具類はその旨を明示し,未使用のものと区別して保管すること。 ル) 作業が終了した時は,サーベイメーター等で作業場所の汚染の有無を検査し,汚染のないことを確認した後,作業室から退出すること。 3. 密封された放射性同位元素(中性子線源)の使用 (1) 管理室で貯蔵箱の鍵を受け取ること。 (2) 取扱に当たっては,中性子線も測定可能な個人被ばく線量計を装着すること。 (3) 中性子線源の取扱いは,貯蔵箱を開けた状態で30分/週以内,貯蔵箱を閉じ厚さ30cmのパラフィンしゃへいを行った状態で30分/週以内とする。 (4) 取扱にあたって取扱及び使用記録に必要事項を記載すること。 (5) 取扱終了後は貯蔵箱の鍵を管理室へ返却すること。 4. 密封された放射性同位元素(メスバウアー線源)の使用 (1) 貯蔵室から線源を使用場所へ移動する際は,線源の在庫を確認のうえ鉛容器に入れたまま行うこと。 (2) 事前に装置をすぐスタートできる状態にした上で線源を鉛容器から取り出しセットすること。 (3) メスバウアー線源の使用は1週間に168時間以内とする。 (4) 取扱にあたっては,使用記録に必要事項を記載すること。 (5) 線源の使用が終了した場合,速やかに線源を鉛容器に収納し貯蔵室にて保管すること。 |
第5章 放射性同位元素の保管
1. 貯蔵室から放射性同位元素を出し入れする際は,汚染及び被ばくの危険に注意すること。 2. 放射性同位元素の保管は,密閉した容器に入れ,亀裂,破損等が生じた場合でも漏出・汚染の拡大が生じないような措置を講じ,放射性同位元素の種類,数量,所属,保管年月日等を明記した標識を付けた上で,貯蔵室の鉛保管箱又は冷蔵庫に保管すること。 3. 実験室内で使用した放射性同位元素は,使用後みだりに放置することなく,貯蔵室に保管するか廃棄処理を行うこと。 |
第6章 放射性同位元素の運搬
1. 理工系施設内における放射性同位元素の運搬 理工系施設内における放射性同位元素の運搬は,周囲を汚染させないよう適当な容器に入れて行うこと。 2. 事業所内における放射性同位元素の運搬 事業所内における放射性同位元素の運搬は,所定の譲受・譲渡の手続きをすませた後に前項に規定した措置に加えて次の各号に定める要領で行うこと。 (1) 放射性同位元素は容器に入れ,必要に応じて梱包して運搬すること。また,亀裂,破損等事故の生ずるおそれのあるものは,ろ紙,緩衝材等で包み,破損及び汚染の発生・拡大を防止できる措置を講ずること。 (2) 放射性同位元素の物理的状態及び化学的状態により容器を選定する。容器内に安全に収納しておくため,放射性物質が浸透したり化学反応したりせず,運搬中の衝撃などで破損しない耐久性のある容器を選ぶこと。特に気体状,揮発性,粉末状の場合には,気密性の容器に入れ容器外への放射性同位元素の散逸を防ぐこと。 (3) 必要に応じ鉛容器等を用いて,漏洩線量を極力少なくすること。この場合において,容器又は梱包の表面の1センチメートル線量当量率が毎時2ミリシーベルト,表面から1 mの距離で毎時100マイクロシーベルトを超えないようにすること。 (4) 容器及び梱包の表面は,放射性同位元素によって汚染されていないこと。 (5) 容器又は梱包の表面に核種,数量,物理的状態,化学的状態,表面の1センチメートル線量当量率,取扱責任者名を明記した標識を付けること。 (6) 運搬従事者は,個人被ばく線量計を着用すること。取扱者以外は原則として運搬に従事させないこと。また,適切なサーベイメーターを携帯すること。 (7) 容器は,管理区域外に放置しないこと。 3. 事業所外における運搬 放射性運搬物を事業所外に運搬するときは,予防規程第29条第3項及び前2項に規定する措置に加えて次の各号に掲げる事項を厳守しなければならない。 (1) 取扱者が直接運搬できるものとして,危険度が極めて少ない放射性物質等の輸送に該当するL型輸送物及び法律で定める量を超えない量の放射性物質等(L型輸送物を除く)のA型輸送物があるが,A型はA型輸送物に係る条件が満たされた容器でなければならない。 (2) 上記の輸送に当たっては,電車,バス等の公共輸送機関内に,持ち込んではならない。 (3) 事業所外における運搬の実際に関しては,主任者の指示に従うこと。 |
第7章 放射性同位元素の廃棄
1. 放射性廃棄物は,実験の都度,一時的に実験室等に用意された所定の廃棄用容器に正しく収納し,定期的又は随時に廃棄物保管室へ運搬し,保管廃棄を行うこと。この場合において,安全管理担当者の指示に従うこと。 2. 放射性廃棄物を廃棄用容器に収納するときは,必ずその都度,所定の廃棄物記録票に必要事項を記入すること。 3. 廃棄物は,α放射体廃棄物及び非α放射体廃棄物に区別すること。 4. 固体廃棄物 (1) 固体廃棄物は,日本アイソトープ協会の分類に従い,可燃物,難燃物,不燃物及び非圧縮性不燃物に分類する。 (2) 液体の入ったビーカー,測定用試料ビン等を廃棄するときは,廃液を液体用廃棄容器に捨て,ビーカー等は乾燥させた後廃棄すること。 (3) 破砕,圧縮等の前処理はしないこと。 (4) 注射器の針等鋭利でケガのもとになるものは,別に危険のないようにまとめて処理し,その表面には物品名と危険の標示を行うこと。 5. 液体廃棄物 (1) 液体廃棄物は,直接流しに捨ててはならない。 (2) 放射性同位元素を取り扱った器具類は,少量の洗浄水溶液等で一次洗浄を行うものとし,一次洗浄液は,保管廃棄すること。 (3) 液体廃棄物は無機液体(pH2以上)及び有機液体(有機溶媒が混入している水溶液を含む)に区分し,所定の容器に収納して保管廃棄すること。 (4) 有機溶媒を廃棄物として取り扱う場合は,液体シンチレータ廃液とそれ以外の有機廃液を区分し所定の容器に収納すること。 6. 非圧縮性不燃物 泥状,かゆ状のもの,液体を分離することが困難なイオン交換樹脂等のスラリー状のものは,乾燥し,非圧縮性不燃物として所定の容器に収納して保管廃棄すること。 7. 前項までに定める各容器の表面の1センチメートル線量当量率は,毎時5マイクロシーベルトを超えないようにしなければならない。これを超える場合は,安全管理担当者の指示に従うこと。 8. 廃棄業者による集荷の対象とならない放射性廃棄物は,次の各号のとおりである。 (1) 気体状の放射性廃棄物 (2) 病原菌及び病原体を含むおそれのある放射性廃棄物 (3) 毒劇物を含む放射性廃棄物 (4) 放射性有機廃液 (5) 前4号以外の爆発物,自然発火するおそれのある放射性廃棄物 これらの放射性廃棄物は,当理工系施設で保管しなければならないので,できるだけ廃棄物を少なくするような実験方法で使用すること。 9. 非放射性廃棄物は,次の各号に定める要領で処理すること。 (1) 固体は,汚染の有無を確認の上,所定の場所にある一般ゴミ箱に廃棄すること。 (2) 非放射性の有機溶媒廃液,重金属イオン等を含む液は,絶対に流しへ流さず「金沢大学における薬品類の廃棄物の処理に関する規程」(「薬品類の廃棄物の処理に関する手引書」参照)に従い,各利用者が適当な容器を用意し,当該容器に溜めておき,放射性同位元素の汚染のないことを確かめた後,実験終了時には各自の研究室へ持ち帰ること。 |
第8章 施設の環境管理
1. 理工系施設では,放射線障害のおそれのある場所における放射線の量,汚染の状況,空気中濃度,排気中濃度,排水中濃度等を随時あるいは定期的に測定して,放射線障害の防止に極力努めているが,利用者も安全取扱に関する一義的責任が利用者自身にあることを十分認識し,汚染防止や空間線量の減少に努力すること。特に実験室の汚染や空間線量が著しい場合には,利用の中止又は一時停止を求めることがある。また汚染防止上,実験室の清掃,整頓に常に留意すること。 2. 排水及び排気 (1) 理工系施設内では,強酸,強アルカリ(pH6以下,または8.5以上)及び有機溶媒を直接流しへ流さないこと。また,クロム硫酸の使用を禁止する。 (2) 放射性ガス又はダストの出るおそれのある実験は,すべてフード内で行うこと。 |
第9章 放射線被ばく及び健康管理
1. 放射線業務従事時間の記録 放射線業務従事時間を記録するため,出入の際にはロビー等に備えてある入・退室システムで入退室手続を必ず行うこと。 2. 個人被ばく線量計の装着 (1) 第3章に記載された要領に従って,個人被ばく線量計を装着すること。なお,ポケット線量計使用者は,結果を記録すること。 (2) 個人被ばく線量計は,被ばく状態を測定するため所定の期間ごとに交換し,期間が過ぎたら直ちに次回の分と取り換え,管理室へ返送すること。 3. 健康診断の受診 理工系施設長から,健康診断が必要と指示された者は,必ず受診すること。 |
第10章 設備機器の使用
1. 基本事項 (1) 使用経験のない設備機器については,安全管理担当者に使用法の説明を聞くこと。 (2) 設備機器を使用する場合は,使用記録簿のあるものについては,所要事項を記入すること。 (3) 機器に不調の箇所がある場合は,直ちに安全管理担当者に連絡すること。不調のままで使用することは厳禁する。 (4) 使用者の不注意によって機器を損傷したり,不調にしたりした場合は,修理費等は利用者の負担とする。 (5) 機器の使用に伴う消耗品は,原則として利用者の負担とする。 2. 機器の搬入,搬出 (1) 機器を搬入,搬出する場合は,あらかじめ安全管理担当者へ連絡し承認を受けること。 (2) 搬入した機器のうち長期間据えつけておく備品等には,ラベル等をつけて使用者名,所属等を明記しておくこと。 (3) 機器を搬出する場合は,放射性同位元素の汚染が無いことを確認の上行うこと。 |
第11章 消耗品
1. 手袋,マスク,作業衣等放射線防護用消耗品は理工系施設で補充するが,ガラス器具,薬品等は各利用者の負担とする。 2. 薬品を持込む際において,危険薬品については,種類,数量等を把握する必要があるので,所定の危険薬品持込書に必要事項を記入の上,理工系施設管理室に提出すること。 |
第12章 危険時の措置
1. 危険時の通報 取扱者は,予防規程第38条第1項及び第39条第1項に掲げる災害が発生したとき,又はその発生のおそれがある事態を発見したとき(以下「危険事態」という。)は,直ちに付近にいる者にその旨を知らせ,文献資料室又はγ測定分析機器室に掲示してある緊急時連絡(手順)に従って,次の各号に掲げる事項について適確迅速に通報しなければならない。 (1) 危険事態が発生した時刻 (2) その場所 (3) 災害の種類(放射線事故,火災,人身事故等) (4) その内容(発生状況,拡大性の有無,死傷者の有無) (5) 通報者の所属,氏名 2. 危険時の措置 取扱者は,火災が発生したとき又は火災防止のため,次に掲げる措置を行わなければならない。火災以外の危険事態が発生したときは,主任者の指示に従って必要な措置を行い,放射線障害の防止に努めなければならない。 (1) 火災を発見したとき イ) 直ちに安全管理担当者及び付近の利用者に通報すること。ただし,時間外は中央監視室に通報すること。 ロ) 次に定める要領で初期消火を行うこと。 a) 消火に先だち防じんマスク又はガーゼマスク等で口及び鼻を覆う。 b) 消火器を使用するときは,手元の方から前方に火炎を吹き消すように噴射させる。 c) 火源の周囲の危険物(使用中の放射性可燃物,引火物,爆発性薬品等)は,できるだけ火元から遠ざける。 d) 火災が発生した部屋のフードの排気口のダンパ及びドアを閉じる。 e) 部屋のガス及び電源スイッチを切る。 ハ) 放射性同位元素による汚染に関しては,拡大の防止に努めること。 ニ) 身体に危険を感じた場合は,直ちに火災発生室より退避すること。 (2) 火災報知ベルが鳴ったとき イ) 直ちに実験を中止し,安全管理担当者の指示を待つこと。 ロ) ガス及び電源を使用している場合は,直ちに止めること。 ハ) 避難が必要な場合は,使用中の放射性同位元素を貯蔵室に保管すること。 ニ) その他安全管理担当者の指示に従うこと。 (3) 避難後の処置 イ) 放射性同位元素の使用状況について,安全管理担当者に報告すること。 ロ) その他安全管理担当者の指示に従うこと。 (4) 日常の心得 イ) 直接火を使用又は火災発生の危険性のある実験では,火災が発生しないように注意して実験すること。 ロ) 発熱の可能性のある機械の長期使用は行わないこと。 ハ) たこ足配線は行わないこと。 ニ) 退出の際は必ずガスの元栓を閉じ,電気のスイッチを切り,電熱機器のコードは,コンセントからはずしておくこと。 ホ) 地震発生時の火災を防止するため,引火性試薬の転倒及び落下を防止するための措置を行うこと。 |
第13章 利用上の問題の処置
1. 利用者が理工系施設利用上,不便を感ずること等,問題が生じた場合は,安全管理担当者を通じて理工系施設長に申し出るものとする。理工系施設長は,必要に応じて理工系施設安全委員会の議を経て,審議の上,改善を図るものとする。 |
附 則
この細則は,令和 3年 4月 1日から施行する。 |